今日は、いつも通り薬事と全く関係ないですが、紙であふれているカメ夫の日常の理由を紹介したいと思います。
紙であふれた業界なのは、他にも厚労省の申請など理由はいくつかありますが、代表的な事例の一つとして紹介していきます。
製薬業界は書類が多い?
製薬業界ですが、書類がかなり多い業界です。
医薬品を製造する製造所は、命に直接関わる製品を製造していることから安定した品質の製品を供給する必要があります。
そのため、製造においてGMP (Good Manufacturing Practice)を守らなければいけません。このGMPには以下の3原則というものが存在します。
- 人為的な誤りを最小限にすること。
- 医薬品の汚染及び品質低下を防止すること。
- 高い品質を保証するシステムを設計すること。
GMPについての詳しい説明などは東京都安全健康保険センターのHPなどで紹介されています。説明していると本題にはいれなくなるので、興味のある人はそちらを見て下さい。
医薬品業界で紙が増える理由の一つとして、この人為的な誤りを最小限にすること。が関係があります。
この理念のために全ての作業を手順書に従って行い、実施した作業を記録し、後から実施した作業が間違っていないか検証する必要があります。
この作業に伴い、紙の手順書、製造記録書、記録を確認した際の記録など莫大な紙が発生します。それに加えて、副作用などの事例が発生した場合に備えて大抵の会社はこの記録を10年間以上記録を保管していると思います。
想像するだけでも、書類の山が頭の中に浮かんでくると思います。
どうして電子化しないのか?
医薬品業界になじみがない人は手順書をタブレットなどで見たり、記録を全て電子入力すれば紙が減るではないんじゃない?という意見があると思います。
もちろん、全体としては製薬業界でも電子化の方向に舵は切られています。
ただ、営利企業であるとしても医薬品を製造しているので、「ミスや偽造が発生しない>効率」となり、この前提を保った上で電子化を進めていくことになります。
ただ、規模が大きい会社ではないとこの前提条件をなかなかクリアできず、中小企業は紙ベースが多くなるのが現状です。
続いて具体的にどのような条件をクリアできないか2つほど紹介したいと思います。
紙はどこにでも持ち運べる。
最近、ミスや捏造を防ぐため製薬業界ではData Integrity(データの完全性)の概念が強く求められてきており、その中にALCOAの原則というものがあります。
Data IntegrityやALCOAの原則の話は、長くなるのでここでは「ふーん。」くらいに聞いていてください。また、機会があれば紹介したいと思います。
このALCOAの原則のCはContemporaneous「即時に記録すること」です。
即時に記録しないと忘れてしまったり、勘違いが起きやすくなるので、すぐ記録しろという概念です。
大企業は、システマチックな製造ラインですが、原薬メーカーやそんなに大きくない会社はどこにでもシステムを張り巡らせてすぐ記録をとるのは不可能です。一方、制約なく持ち運べる紙ならその場で記録をとれます。これが、なかなか紙から脱却できない理由になります。
ていうか、製造業はウイルスが基幹システムに入ったら、操業停止やから、スタンドアローンにしているところも多いし、お金もかかるし、難しいね。
改変できないシステムの構築が難しい。
製薬業界で電子化を進めていく上で難しい点の2つめとして、捏造を防ぐために改変ができないシステムを構築する必要があることが挙げられます。
まあ、失敗したからなかったことにするのは駄目だよね。
ということで、システムで記録をする際は、
・記録した個人が特定できること。
・個人が記録を書き換えできないこと。
・誰がいつ何をしたかわかること。
などなどたくさんの要求事項が挙げられます。ただ、製薬業界以外にこういう完全性を求めるシステムは少ないので、製薬業界向けに使っていても全く問題ないことをうたっているシステムはとても高価です。
そのため、大手しか導入は難しいから紙ベースになっていくんですよね。
紙でもその場で失敗して捨てたり、消しゴムで消したら一緒じゃない?
紙の場合も、ボールペン以外の持ち込み禁止や特性の穴あけ機やインクでコピーしたらわかるようにした紙を配布して、何枚返却されたかを数える涙ぐましい努力があるんよ。
定期的な断捨離
ということで、このように大量の紙がでるので、保管期間を満了した記録は捨てていかないと冗談抜きで重さで床が抜けます。
そのため、定期的に廃棄作業をするのですが、異常や苦情なんかに関する記録は後で確認しなければいけないので、PDFにしてから捨てています。
やたらホッチキスがあったりしてスキャンするのに、凄い手間でついつい後回しの山ができてしまって進まないんですよね。
カメ夫的には上記の会社のような書類を電子化してくれる会社に委託して、パーっと作業を進めて行きたいのですが、下っ端のカメ夫にはそんな権利がないという悲しさ( ;∀;)
最後に
製薬業界でなかなか電子化が進まない理由は他にもたくさんありますが、かいつまんで紹介しました。
長々とありがとうございました、閲覧者数が増えたら似たような記事を投稿しようと思います。
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