小林化工㈱のイトラコナゾールの回収ですが、遂に死者まで出て、ニュースでも取り上げられるようになりました。
ニュースを見て、ジェネリック医薬品を飲むのが怖いと思う人もいるかもしれません。
ただ、今回の事件が起こった肝は、「承認書に記載のない工程を実施していることが判明いたしました」の部分です。
実際には、収率減を補うために承認書に記載のないタイミングで継ぎ足しを行っていたそうです。
通常、上記のようなことをしていない限り、他の薬剤の混入なんか滅多に起こりえませんので、今日はその辺りについて説明していきたいと思います。
他の薬剤の混入が起こらない理由は?
基本的に、上記のような事件を起こさないように製薬企業は様々なチェックを行っています。
原料の仕込み工程での対策
・原料を仕込む工程に限らずほとんどの工程は基本的にダブルチェックで行います。
※小林化工㈱の当初回収理由は、上記をしていなかったとのことでしたが...。
・原料の仕込み工程では、基本的に使用した量を製造記録に記録します。
製造記録は、後で責任者を含めて何人もチェックするので、変な量を入れているとすぐわかります。
・基本的に原料タンクですが、ロードセルがついていますので、変な量をいれるとすぐわかります。
・また、原料の仕込み工程に限らず、全ての工程では標準収率が設定されています。この範囲を外れると逸脱処理と呼ばれる異常に対する対策をしなければいけません。
今回の小林化工㈱はこの標準収率の逸脱処理をしたくなくて、途中で継ぎ足しをしていたのでしょうね。
上記の対策をしていると基本的に入れ忘れや追加で入れてしまっているというのは気づけるはずです。
原料の出納管理での対策
・基本的に全ての原料は出納管理をしています。そのため、間違えて違う原料を使用するとここで気づくはずです。
また、棚卸しも定期的にやっている筈です。
試験検査での対策
・試験検査ではこういうミスを防ぐために、いろいろな試験を実施します。
例えば、添加剤と他のものを入れ間違えても、崩壊試験などで影響がでてくるので、ここでわかるようになっています。
出荷判定での対策
・製造が終わった後で、出荷判定と言って、全ての製造記録や試験記録をチェックして出荷可能かを判断します。
ここで、記録とかにおかしなところがあれば発見することができます。
上記のようないろいろなミス防止策があるので、本来ならばこのようなことが起きる確率は限りなく低いはずです。
「承認書に記載のない工程」を行うとなぜこんなことが起きるのか?
ただ、承認書に記載のない工程を行うとこのようなことが発生する確率がかなり上がります。
その理由は、記録も手順もない操作だからです。
基本的に承認書違反なので、手順や記録があると県の監査の際に指摘されます。
そのため、おそらく記録も手順もないのだと思います。
そうすると、記録上ない操作ですので後から記録を見ても気づけませんし、収率も逆に正しくなるように調整しているので気づくはずもありません。
今回は、混入した量が錠剤の全体量に対しては少なかったので、錠剤に対して与える影響が少なく、崩壊試験等で気づかなかったのでしょうね。
唯一、気づくとすると原料の出納管理の部分だと思うのですが、この辺の部分の管理はどうだったのでしょうかね?
まとめ
何となく、ちゃんとした管理をしていたら他の薬剤の混入が起こる確率が低いことは分かって貰えたでしょうか?
そのため、全てのジェネリックがヤバいと思わないで欲しいですね。
ただ、このような承認書違反は本気で隠されると内部告発意外では見つけるのは難しいので、その辺は信用の問題なのですが...。
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