月刊薬事の定期連載の「目からウロコの薬価交渉術」で今月はコロナによるサプライチェーンの問題とそれによる原薬の供給難に触れていました。
それに関連してカメ夫もメーカーで勤務していてこの問題に関して感じる点をがあるので書いていきたいと思います。
その1は国内では原薬を製造する環境が厳しくなってろい、中国やインド産の原薬が増えていることについて書いていきました。
その2では、海外にシェアを奪われたらどうなるかの問題点にもっと焦点をあてて書いていきます。
コロナウイルスの際の有事に供給難になる!!
「目からウロコの薬価交渉術」で触れていたのはこの点ですね。
コロナウイルスで医薬品を自国を優先するため、中国やインドが自国に原薬を優先的に回すという報道がなされました。
実際には、医薬品ではそこまで問題が顕在化するレベルにはなりませんでしたが、このようになったのがマスクですね。
原薬の国内製造離れが進むにつれて、医薬品についてもマスクと同じことになるリスクがどんどんあがっていることになります。
また、今回のコロナで世界中の物流が大混乱になったこともあり、今の世界中から原料を購入するということに対する物流面のリスクも浮き彫りになりました。
突然の供給停止のリスクもある!!
コロナウイルスで顕在化したサプライチェーンに関する問題以外にも中国やインドでの原薬を購入するリスクはあります。
それは、規制当局の査察などによって原薬メーカーが出荷停止処分を受けてしまうリスクです。
中国とインドの原薬は安く、メーカー数も多く、メーカーのレベルもピンキリです。アメリカ食品医薬品局(通称:FDA)の査察を受けて出荷停止処分を受けて、突然原薬が入手できなくなるリスクということが冗談ではなく、起こりえます。
そのため、製剤メーカーはこのような状況にならないよう原薬メーカーの監査を行うのですが、あるグローバルメーカーではインド担当1人、中国担当1人、その他アジア担当1人みたいな分け方をしていると聞いたこともあります。
それだけ、メーカー数もリスクも多いわけですね。
国内製造に回帰するのか?
上記のような理由で、中国やインド産原薬を使用するリスクが最近顕在化してきています。ただ、これで国内製造への回帰が進むかと言えばカメ夫としては進まないと思います。
その理由は、その1で述べたように価格競争は厳しいのに、規制は厳しくなりコストは上昇していっており、どんどん原薬メーカーの利益は減っていく一方だからです。
これに加えて。さらに医療費高騰による薬価引き下げの影響もこれからどんどん受けます。上流のメーカーにコスト引き下げが玉突き式に要求されていくのですよね。
結局、日本全体で安さを求めていくか、有事の安心を求めていくかとの話になるのですよね。
ただ、現状では安心と安さ両方をみんな求めますが、将来的にはどんどん両立が厳しくなります。
その際、デフレの日本で安さを捨てられるとはカメ夫は思っていません。
まとめ
2回にわけて、日本での原薬供給難に対する考えを書いていきました。グローバル化で何でもコストは抑えられますが、こと医薬品についてはリスクも大きいのでその点も知ってもらえたらと思って書きました。
へえー、くらい思って頂けると嬉しいです。
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